こんにちは、代表の足立です。
前回のブログでは、「なぜ、あなたは納得のいく住宅会社さんと巡り合えないのか」ということについて、業界の現状と共に説明させていただきましたね。
おかげさまで、そちらの内容がたいへん好評で(主にきちんと家づくりをされている同業者さんからですが…)、続きを書かせていただくことになりました。
前回のブログで述べたように、性能を担保できていない住宅会社が多数を占めているのが日本の住宅業界です。これは業界的にはとても残念なことですし、選ぶ方もたいへんです。
でも、これから家を建てようとしているあなたにとってみれば、「じゃあ一体どうしたらいいの!」と言いたくなってしまうのも当然です。
でも、逆に言えば、そのような会社を選択肢から排除するだけで、あなたが選んでもよい住宅会社はかなり絞られます。その時点で、あなたの家づくりはほぼ成功したようなもの、ということになります。
そこで、今回のブログのテーマは「失敗のリスクを減らせる住宅会社の選び方」です。
●●な住宅会社を信用しないこと
実のところ、たったひとつのことに気をつけるだけで、住宅会社選びのリスクは激減します。
それは、
自社の尺度で性能をアピールしている会社を信用してはならない
こちらです。
もしあなたが、会社選びに不安を感じているようなら、上記のことに気をつけるだけでかなりの不安が軽減されるはずです。
もう少し詳しく説明していきましょう。
弊社にご相談に来られた方にお聞きしてみると、住宅会社を選ぶときの不安というのはつまるところ「この会社が建てる家で大丈夫??」ということになります。
もちろん、住宅会社自体の経営状況や、社長/スタッフさんとの相性も重要ですが、あなたやご家族の「ふだんの暮らし」に直接関わってくるのは『家』そのものです。
『家』の要素の中でも、間取りやデザインは分かりやすいから判断もしやすいと思いますが、目に見えない性能や素材などは、「これが本当にベストなの?」と思ってしまうのでしょう。
しかも問題は、多くの住宅会社が画一的に自社の性能や製品を「一番いいです!」と強気でアピールしてくること。
「うちは●●を使っているから安心です!」
「●●工法だから地震に強いです!」
「著名な建築家が〜〜〜〜!」
「新開発の素材が〜〜〜〜!」
などなど、そのPR方法は枚挙にいとまがありません。
何社か見て回るだけでも、そのすべての会社が自社の商品をゴリ押ししてくるわけですから、聞いている方はもうウンザリしてしまいますよね。
客観的に各社の仕様や性能を比較したいのに、それぞれの住宅会社が主観的なアピールしてくるからどうしたらいいかわからない…。こんなふうになってしまうのは、容易に想像がつきます。
また、ちょっと家づくりを勉強された方は、「なるべく客観的な指標で判断しよう」ということで「耐震等級」や、「UA値」(断熱性能の値)、「C値」(気密性能の値)といった情報をベースに住宅会社の仕様をチェックされるのですが、ここにもかなり大きな落とし穴があります。
多くの場合、住宅会社がアピールしているそれらの数値は「自称」であるということです。
「長期優良住宅仕様」や、「耐震等級3相当」は論外ですが、「耐震等級3」や、「UA値●●」と掲げている住宅会社ですら、実際にその通りの数値になっているかどうか、本当のところは分かりません。
「さすがに、それはありえないでしょ」と思いますか? でも、本当に残念ながら、これは事実です。根拠となる調査結果もありますし、HPでは全棟長期優良住宅と謳っている住宅会社の現場を見ていくと、明らかにHPで掲げている仕様と異なる作り方をしているのがわかります。(そういう会社が、この地域にも多く、存在しています)
UA値や耐震等級3などは、法律に基づいた言葉ではあり、その性能が実際に担保されているかどうかをチェックする第三者評価も存在していますが、現行の法律では、そういった客観的な評価は義務ではありません。
車だったら出荷時の検査があって、その後は一年ごとの法定点検や二年ごとの車検があるものですが、車よりはるかに長い時間使用するはずの住宅には、それらの検査や点検がまったく使用されていないのです。
ですから基本的には、それらの数値は住宅会社の自己申告でしか判断できないのが現状ですし、ほとんどのケースで、これらの数値が担保されないまま、実体上は法令違反の家が建っています。お施主様が知ったら「ふざけるな!」という話になるはずですが、知らないがゆえ、問題になっていないということにすぎません。
家づくりを始めたばかりの方々は、当たり前ですが住宅の専門知識もありません。その状態で、正解が分からずに自称「住宅のプロ」を名乗る人たちの話を聞きにいくわけです。
さまざまな知識を惜しみなく提供してくれる営業マンや工務店の社長さんのことを信用してしまうのも無理はありませんが、その「情報の非対称性」が自分の立場を弱いものにしていることに、あなたも気づく必要があります。分からないから、分かっているふうに話すその営業マンの言うことを盲目的に信用してしまうということですね。
本当はもっと熟慮しなければいけないはずの性能設計
性能設計の難しさは、その専門性にあります。構造を強くしようと思えば断熱性能に悪影響が出たり、それら材料の選定や施工技術が、住宅そのものの耐久性などに影響してきたり。
このように家づくりでは、住宅性能の知識は、多岐にわたる知識が必要です。大学の教授のように、「温熱だけとか耐震だけとか、専門的な一つの要素だけでプロ級!」では全く通用しません。(もちろん、学問としては一つの領域に特化していただくのはとても重要なことです)
だからこそ、経験値や熟練度が必要になってきます。それが住まい手の暮らしや命に関わってくるわけですから、簡単に考えられるものではありません。建築は目に見えるものなので分かりやすく感じられますが、実際にはお医者さんと同じくらい、高度な専門職だと言えると思います。
たとえば、断熱性能を客観的に把握するために、前述のUA値を算出するのですが、この温熱計算も、実際にはとてもややこしいものです。
計算には、細かい部材なども反映させる必要があるのですが、知識のない人ほど、そういった細々したもののヌケモレが多く、数値がよい方に出てしまうという問題もあります。
「G2レベルの断熱性能」と、高性能住宅を訴求している住宅会社の家も、仕様をよくチェックしてみると、実は結構ツッコミどころがあったりするのです。これは、選択する施工方法や検討すべき各要素が多すぎることと、それに対する理解度が低いために起きてしまいます。
知識も無いのに、入力のヌケがあってもエラーが起きることなく数値が出てしまうような簡易的なPCソフトで、機械的に算出しているようではダメなのです。
最低限、自分で詳細を手計算できる知識と技術は設計者には必須です。それらを理解した上で計算ソフトを使用するのはOKですが、計算式の根本的な概念を理解せず、ただ機械的に部材などをソフトに入力するのはNGです。
数値だけを目的として計算ソフトにただ打ち込んでいるだけでは、快適性や、本当の安全は手に入らないと思っていただいた方がよいでしょう。家づくりにおいては、設計者がどれくらいの経験を積んでいるか、その経験値が非常に重要なのです。
UA値などは、それを掲げている住宅会社に計算書があるかどうかもチェックが必要でしょう。計算していると言っても、過去の物件で一度計算しただけだったり、グレードの高いモデルハウスで計算しただけというケースもあるようです。
ちなみに、たとえ計算がなされていたとしても、日本の家は前述のようにその後の検査がありません。極端な話、建てる時に断熱材が違ってもそのまま建ってしまうということです。
チェック体制のない日本の住宅業界。家づくりはどうすべき?
住宅を設計した際に、それが正しい性能を担保できる設計になっているか(設計検査)も、その設計図通りに正しく施工されているか(建設検査)も、どちらもまったくチェックがなされていない、日本の住宅業界。
「性能を自称している会社を選ぶべきじゃないのは分かったけど、じゃあどうしたらいい?」というお話になるかと思います。
基本的には「検査を取り入れている会社を選びましょう!」ということになるのですが、思った以上に長くなりそうですので、そのあたりはまた次回。